読書感想「あなたの人生の物語」(映画「メッセージ」原作)

あなたの人生の物語 - テッド チャン, 浅倉久志
あなたの人生の物語 - テッド チャン, 浅倉久志

本としては中編集となるが、その中のタイトル作「あなたの人生の物語」は2016年の映画「メッセージ」(原題「Arrival」、日本公開は2017年)の原作。

私が書いた映画の感想はこちら

映画感想(メッセージ)ネタバレなし版

映画感想(メッセージ)ネタバレ有り版

要するに映画は非常に気に入りました。
たまたま安売りしていたブルーレイまで買っちゃうくらい。

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なので、感想は映画のストーリーとの比較という形になってしまうので、思いっきり映画のネタバレ、もちろん小説のネタバレにもなってしまいますので、ご注意ください。


小説は映画とは後半のストーリー違います。

中国の強硬姿勢とか、最後にエイリアンが大量の情報を置いていくとか、3千年後に含みをもたせていくとか、そういう要素は0になっています。

でも、エイリアンの言語を学ぶことで時間の前後に意味がなくなることは共通しています。

なので、映画の謎の答えを探すという意味では小説には期待はずれでした。


でも、エイリアン独特の時間感覚には深く言及されていますね。
また、エイリアンの姿形が空間認識に影響を与えているだろうという記述から、その時間感覚にも影響を与えているのだろうという推測も生まれます。

私の映画の感想からすると、エイリアン独特の時間感覚などは小道具で、主人公の娘への愛が本筋なのだと思ったわけなのですが、小説ではむしろ、娘の「記憶」がエイリアンの時間感覚への気付きでしか無くなっているわけで、時間感覚そのものが本筋となっています。

まぁ、そのへんはSFっぽいといえばそのとおり。

この作者、かなり理屈っぽいSF作家のようで、この本の最初に収められている「バビロンの塔」などは、ああ、閉じた宇宙論ね、、って感じの小説でした。

「あなたの人生の物語」ではエイリアン言語によって得られる未来の記憶についても映画よりも、その性質について記述があります。

普通、悪い未来が見えたら、それを回避するように努力するものだし、現在を変えるために過去に行くなんて話はたくさんあります。

でも、この物語では未来は変えられないものとなっています。

たとえ未来を知ってしまっても、それは芝居の台本のようなもので、結局はそのように演じられてしまう。

そんな考え方になっています。

なので、映画では娘ハンナが若くして死んでしまうことを知っていても、それでも、短くとも人生を歩ませてあげたいと、ハンナをこの世に迎えることを決意するかのように見えたが、小説では、あなたが生まれることは決まってるからそうするのって感じ、、

なので、映画の最後のような涙は出てこないですね。

でも、前述のように多くの作品で過去へ戻って現在、未来を変えるという事をしているが、それによって別の並行宇宙が生まれるだけで出発点の時間軸は変わらないという考え方が有ったり、そもそも過去へは行けないという考え方が有ったり、そんな議論はこの作品の考え方で吹っ飛びますね。

未来を知ろうが変わらないのよと、、

まぁ、自分ひとりが未来を知っても、ごく身の回りの数年、数十年が多少変わるだけ。
人類全体が知ってもせいぜい数百年が変わるだけ。
宇宙全体の何億年、何千億年先は変わらないですね。

では、エイリアンは何しに来たんですかね。

映画では何やら叡智を授けてくれたようですが、小説では実質地球人類にとって目新しい情報はくれていない。
あえて言えば、エイリアンの言語を学んだ数人が未来を記憶として見る能力を身に着けただけ。

そして、未来を知ったところでどうにも未来は変えられない。

うーん、何しに来たんだ、、、

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