読書感想「め組の大吾」

幼い頃に消防士に助けられたことをきっかけに、消防の道に進んだ主人公大吾の物語。

この漫画の作者、曽田正人氏を知ったのはこの「め組の大吾」の一つ前の作品、「シャカリキ!」。
こちらの作品は「坂やったら誰にも負けへん」が口癖の高校生、野々村輝(テル)を主人公とした自転車漫画。
「シャカリキ!」が連載されていた時期は私が自転車を趣味として始めた頃だったので、自転車仲間と共に読みふけっていた。

この人の漫画はとにかく「熱い」。

「シャカリキ!」のテルは負けず嫌いの上に上り坂の速さにプライドを持っているので、ライバルたちに上りで挑まれるとそれこそシャカリキに対抗する。
誰よりも速く頂上に達することを目指していた。

しかし、そんな彼もツールドおきなわで優勝して、国内に敵なしとなると目標を見失い、高校に退学届を出してがむしゃらに富士山などの山に独りで挑み続ける。
その姿は狂気すら感じるほど。

今回読んだ「め組の大吾」もそんな狂気を感じる作品であった。

大吾は最初の2度の出動でこそ恐怖を感じるが、そんな恐ろしい現場に立つと超人的とも言える勘と洞察力、そして独断的な行動で要救助者を次々に救っていく。
しかし、いつしか人を救うためではなく、危険な場所での冴え渡る感覚や高揚感の為に炎の中に立つのではないかと思い始める。

本来は消防士は暇である方が世の中は平和ということ。
しかし災害がなければ自分の存在価値すら無くなってしまうのではないか。
そんな思いに囚われていく。

その姿が目標を見失って富士山を登るテルの狂気を思い起こさせた。

炎を見つめる大吾の目は坂を見上げるテルそのものだ。

「シャカリキ!」の直後の長編だけに、「シャカリキ!」が抜けてないなぁと思わせる所も多い。
大吾のライバル甘粕はユタだし、落合先生はテルのお姉さんだし、休暇中の隊員の補充要員としてやってきた平に至っては見た目ほとんどテル。
(平は1週間の補充のはずが、その後ずっと居るんですけど、、、引っ込めるの忘れた?)

物語が進むにつれてキャラクターのオリジナリティが出てくるものの、最初の頃はかなり「シャカリキ!」臭い。


さて、かつて夢中になった「シャカリキ!」と同じ作者だからとはいえ、今になって「め組の大吾」をなぜ読もうと思ったかというと、Twitterでこんな投稿を見かけたからだ。

大事にご褒美の日に読むつもりだったけど、20巻、一気に読んでしまった。凄かった。

コンピテンシーや環境の相性について、近年ようやく語られているような、そうでもないような感じだけど、

: "め組の大吾(1) (少年サンデーコミックス)"(曽田正人 著)

わたしがそれらを意識し出したのは10年ほど前だった。未だに、うまく伝わってないな、と思うことがある。

要は、人に備わっているのは欲求であって、それが目の前の物事とうまく噛み合うと、とんでもない能力が発揮される。

才能や天才というものは潜在的に備わっているわけではなく、

欲求と環境のかけ合わせによって育まれ、発揮されるもの、という考え。

この漫画はまさにそれを描いている。論理と規模で解決することの限界と、「噛み合った」人間の異常な成果は比じゃない。

こんな作品が20年前の、しかも1997年という、戦後最も鬱々とした日本で連載されていたなんて!

かそ~🎄🎍はしるぶた🐖🐖🐖
@runningpiggg さん


欲求と環境の掛け合わせ。

私は最初、大吾と職場の人たちの事かと思った。

もちろんそれもあるだろう。

大吾は五味所長でなければ使いこなせないだろう。

でも、大吾と絶望的な現場という意味もあることに、読み進めていって気付いた。

それほどに災害現場での大吾から引き出される能力はとてつもない。

私は長年、会社の正社員としてシステムエンジニアをやってきたが、自分のやりたいことと、会社から期待されていることがずっとずれていた気がする。
今、派遣社員としてVBAプログラマをやっているが、自分がやりたかったことはこれだったと改めて思ったし、派遣先でも好評価をいただくことが多い。

だからこの方の書き込みが目に止まり、この作品に興味を持った。

「シャカリキ!」の連載終了後、同じ作者だからと「め組の大吾」も少し読んだが、その当時は惹かれなかった。

でも今回は、私も2日位で一気に読んでしまった。

はしるぶたさんに感謝。



やりたいことが出来ていない気がする、周りから評価されないという人は、社会人として自分を置く環境を変えてみるのも良いかもしれない。

め組の大吾(1) (少年サンデーコミックス) - 曽田正人
め組の大吾(1) (少年サンデーコミックス) - 曽田正人

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