SFのリアリティ(彼方のアストラ論争)

昨日までアニメが放送されていた「彼方のアストラ」。
2016年5月9日から2017年12月30日まで連載されていた漫画が原作。
私もたまたま1話を見て引き込まれて最終回まで見ていた。

主人公たちの高校の恒例のイベントとして宇宙キャンプが開催され、主人公たち9人の少年少女が惑星マクパに降りたつ。
しかし、その眼前に突如謎の球体が現れ、気づくと全員宇宙空間に放り出されていた。


そして、その最終回放送直前に、「アストラのSF論争」という文をSNS上で見かけた。
え、アストラって、ブラッド・ピットの「アド・アストラ」の事?
と思ったが、「彼方のアストラ」の方だった。

論争のすべては追っていないが、要は「科学考証がなってない」とか、「そもそもSFなのか」という意見が出ているらしい。
これに対して、作者もコメントを発表。

ここ数日見かける「彼方のアストラはSFとしてどうなんだ論議」。仏の顔で静観してましたけどなかなか終息しないですね(笑)。論ずるだけ不毛だと思ってるのでなんだか申し訳なく思ってきちゃって…😅
余計だとは思いつつもちょっと一言。

件のレビューの言いたいことは正しいと思います。口調の悪さはありますが評論は自由であるべきです。むしろ肌の合わなそうな人にまで作品が届いてる事を嬉しくも思いました。
その一方で僕は全ての項目に反論もできます😚。正しさの視点が違うということですね。

多くの項目で「それをやったらページ数かかるから」とか「そうしなかったから」としか言えないですよ。僕の作劇としては「より面白く、より短い方」が優先度が高いので、つまらないページが多くてもいいからガチでやれ勢とはそもそも優先度が違います。

例えば彼らは無人探査機が取ってきたデータを持っています。人間に適して安全な成分の空気や食料が存在する惑星を選んで訪れてるので話がポンポン進みます。テンポのために都合のいい設定を作ってるのでご都合展開は当たり前で(笑)。描きたいものと読みたいものが違うとしか言いようがないわけです。

この作品はハードSFでも本格ミステリでもなく少年漫画です😚ドラえもんの道具みたいなのを出して皆でツッコむシーンを描きたいんだからガチ目線で見ればそりゃ噴飯ものですよ。
あと今回のはアストラが合わなかった人がガチ勢の論法を使ってるだけなのでジャンルの衰退云々はそんなに関係ないかと。

インタビューなどで繰り返し言ってるのですが、僕はこの漫画を子供たちに読んでほしいと思ってます。舞台装置としてだけのなんちゃってSFですが子供の入り口になってくれればとても嬉しい。僕の子供の時のSF体験はガンダムや銀河鉄道999やドラえもんの映画です(アストラ観たら分かると思うけど)。

そして心に強く残ってるのはラストシーン。アムロがア・バオア・クーから脱出するシーン、鉄郎とメーテルの別れのシーン、のび太の部屋とロップル君の扉が離れていくシーンなど。ずっと心にトゲのように刺さっていて、ストーリーなんか全然覚えてなくても思い返すとグッとくる呪いとして残っています。

彼方のアストラのたくさんある明るいシーンやいくつかあるギョッとするシーンのどれか一つでも子供たちの心に刺さればいいなと願っています。そしてもちろん最終回も。

といわけで皆さん。

9月18日。

彼方のアストラ最終回1時間スペシャル!

絶対観てくれよな!
以上宣伝でした!


https://twitter.com/kentashinohara_/status/1173449250560073728

要約すると、

「この作品は少年誌の漫画です。
色々はしょった部分、ご都合主義で進めた部分は有り、そういうところが引っかかる人もいるだろうけど、この作品はそういう人が読みたいものとは違っただけ。
作者が狙った人たちにラストシーンが刺さってくれれば良い。」

と言う所でしょうか。
全く正論です。
私もその通りと思います。

原作漫画でも5巻、アニメは初回と最終回が1時間なので、実質14回分、7時間弱の尺で語られる物語でありながら、大きく二つの謎を秘めて物語が進められ、9人の少年少女たちの過去にも触れ、5つの惑星を経由して母星を目指すというストーリー。
しかも、何度か絶望的状況に追い込まれるが、それを脱すれば軽妙なギャグをふり混ぜられてストーリーは進む。

もう、見事としか言いようがない。
そう、見るべきところが違うのだ。
そういう意味では、事の発端となったレビューの「SFファンは見ないほうが良い」と言うのは正しい。
そうしたミステリー、しっかり作りこまれた9人の過去、彼らの成長を見るべきで、SF考証的なところを見るべきものでは無い。

そういうのを見たければ、映画「オデッセイ」の原作「火星の人」でも読んでいればよろしい。
高校の化学でmolの考え方とかちゃんと習っていないと、主人公が何考えているかわかんないから。

で、こうした流れを受けてか、JAXAに勤める野田篤司さんがこんなツイートを

私がSFの科学考証する時に最初に聞く質問がある
「例えば、ロケットの打上げは、どんなイメージ?」

・格好良い
・速い
・大きな音
・光る
・煙/雲を引く
・振動/揺れる/高加速度
・危険

これらの内、ロケットの本質は「速い」だけ、「格好良い」は感性、それ以外はロケットにとってマイナス点だ

音や光、振動、煙などは、エネルギーや廃棄物の無駄だ
エネルギー効率を100%にすれば、騒音も光も排煙もなく、糸を引いたようにス~と宇宙に行くロケットになる
自動車が、昔はエンジン音がうるさく振動して煙のような排ガスを出していたのが、ハイブリッド車や電気自動車が音もなく走ったのと同じだ

騒音も光も排煙もないロケットは、5年や10年では実現しないが、30年とか50年後には、そうなっているだろう
いずれにしろ、効率を追求する技術進歩は、ロケットを騒音も光も排煙もない方向に向かわせる

しかし、SFとしてのアニメや映像は勿論、小説の記述では「格好良く見せるために、大きな音と光(続

を出し、煙/雲を引きながら青空を上昇するロケット」を描きたいのが、作家側である

科学技術の進歩を考えると「騒音も光も排煙もないロケット」が本当の未来予想
映像や小説の格好良さを考えると「大きな音と光と煙/雲を引くロケット」

どちらを優先するかは、作家が決めることだと思っている

理想的なSFとしては、「騒音も光も排煙もないロケット」を「格好良く見せる」であろう
しかし、これに、大きな問題が2つある

1つ目:音も光も排煙もないロケットを格好良く見せる演出は大変
従来の演出は、現在過去の格好良いもののを連想させるように行われる
異質な格好良さを作り出すのは至難の業

2つ目:「騒音も光も排煙もないロケット」を、自称ハードSFマニアが「リアリティがない」と批判
苦労して、騒音も光も排煙もないロケットを格好良くみせても、そんなものはあり得ないとの批判が殺到するだろう
今まで私の話を通しで聞いた人は「野田さんが言うんだからあり得る話だろうなあ」(続

と思うかもしれないが、名の知らない作家が何の説明もなく「騒音も光も排煙もないロケット」を出すと、非難の嵐になるだろう

実は、この「2つ目」こそが、現在のSFの一番の問題だと思う
たとえ、若く無名の作家であっても「騒音も光も排煙もないロケット」のような先進的な演出を肯定的に受け入れよう


https://twitter.com/madnoda/status/1174441345710059520

これも、私が常々思っていたことと同じ。
ファーストガンダムなど、昔のSFアニメを見ていると、よく紙の書類が出てくる。
(有名なのは第1回でアムロが拾う、ガンダムのマニュアル)
今でこそ、「いやいや、宇宙世紀に紙は無いでしょ」と思うが、スマホどころか携帯電話もなくパソコンすら一般的でなかった、液晶ディスプレイすら珍しかったファーストガンダム放映時の時代に、何やら字や絵が描いてある板を登場人物たちが眺めて「ふんふん」言っていたら、あれは何だ?となるだろう。

そう、SFなど、未来の世界を描いた物語は見る方にもリテラシーが必要になるのだ。
制作側がすごい知見を活かして、100年後はこうなってるはずだと、めっちゃガチな未来を描いたら、一般視聴者には何のことやらわけわからないという人続出だろう。
もっといえば、どうにかして100年後の実際の映像を入手できても、ほとんど人には理解不能だろう。

実際、現在に至っても、ガンダム世界のスペースコロニーと言う考え方が分かってない人も多い。
(もちろん、ガンダムファンには居ないだろうが。)

なので、或る程度分かりやすく示す必要がある。
上記の野田さんの投稿で言えば、炎を吹き出し、白煙を揚げてロケットが飛ばなければ、なんで飛んでるのか分からん、、と却って分かった風のSFファンがダメな作品認定する可能性すらあるのだ。
逆にゴリゴリにリアルでハードなSFを求めるなら、音もなく上昇するロケットを受け入れなければならない。

そして時代が進んでいくと、液晶ディスプレイ、タッチパネル、デジタルによる音声、映像の通信と言う物を一般の人たちが手に目にする。
すると、そういった物を取り込んでいかないとSFにならなくなる。

近年のSF作品ではタブレット端末や紙のようなディスプレイが現れ、通信のノイズもデジタルなものになってきた。
(昔は通信が途切れると砂嵐にホワイトノイズだったが、現在はブロックノイズ→映像静止、音声は電波が悪い時の携帯電話のようなケロケロ音。アニメ「彼方のアストラ」でも、壊れかけた通信機での通信はケロケロ音だった。)

こうした作品のレビューをする際には、この作品の本質は何なのか、どういう対象に向けた物なのかをしっかり理解して書く必要が有るだろう。

私も良く映画や漫画、小説の感想を書くので、この点は気を付けなければいけない。
ただ、こういう物を期待していたけど、そうじゃなかったというのはそれはそれで大事な情報では有るので、それを伝えること自体は必要なのかもしれない。

彼方のアストラ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
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第1話 前半 PLANET CAMP
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